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更新日付:2020年6月9日 / ページ番号:C035701
狂犬病は、日本、英国、スカンジナビア半島の国々など一部の地域を除いて、全世界で発生している感染症です。狂犬病ウイルスによって起こる動物由来感染症で、犬に限らず、ネコ、キツネ、コウモリなどのほ乳動物から感染することもあります。発病するとほぼ100%死亡するという大変怖い病気です。
感染動物(主に犬)に咬まれたり、傷口、目や口などの粘膜をなめられたりすることで感染します。これは狂犬病ウイルスが、感染している動物の唾液に含まれているためです。爪をなめる動物もいるため、引っかかれた場合にも感染する可能性があります。人から人への直接感染はみられませんが、角膜移植による感染の報告例があります。
感染してから発症するまでの潜伏期間は、咬まれた場所により様々です。通常1~3ヶ月で、長い場合には1~2年後に発症した例も報告されています。
最初の症状は、発熱、頭痛、倦怠感などカゼのような症状や不安感、咬傷部位の痛みやその周辺の知覚異常などが現れます。
その後、興奮、幻覚、錯乱、恐水症・恐風症(水を見たり、冷たい風にあたったりすると首の筋肉が痙攣(けいれん)する症状)などの症状が現れ、最終的には昏睡状態から呼吸停止となり死に至ります。
狂犬病はいったん発症してしまうと治療法がないため、予防に徹してください。
海外で狂犬病の(もしくはその可能性のある)動物に咬まれたときは、すぐに大量の水と石けん、可能であればポピドンヨード等の消毒剤で15分以上かけて傷口を洗いましょう。その後は、早急に現地の医療機関を受診し、曝露(ばくろ)後ワクチン(※)の接種などの発症予防の処置を受けましょう。また、現地医療機関の受診の有無にかかわらず、帰国時には検疫所(健康相談室)にご相談ください。
※曝露(ばくろ)後ワクチンとは、動物に咬まれて感染した可能性がある場合に発症を防ぐために接種するワクチンのことをいいます。狂犬病に感染した動物は、発症する2週間前から唾液中にウイルスが出始めるといわれています。そのため、咬んだ動物が特定でき、予後を観察できる場合、咬まれてから2週間以上その動物が狂犬病の症状を示さなければ、咬まれた時に狂犬病に感染した可能性を否定できるので、曝露後ワクチンの連続接種を中止することができます。
狂犬病はいったん発症してしまうと治療法がありません。そのため、むやみに野生動物や犬に近づかないこと、渡航前に狂犬病ワクチン接種を受けることが発症を防ぐ手段となります。狂犬病流行国に渡航、滞在したり、すぐに医療機関を受診することができない地域に渡航する場合は、前もって予防接種を受けることを検討してください。
ワクチンは4週間隔で2回接種し、さらに6か月~12か月後に3回目を接種します。3回のワクチン接種後、6か月以内に咬まれた場合には0日(咬まれた日)、3日の2回の接種が必要です。また、6か月経過後に咬まれた場合には0日、3日、7日、14日、30日、90日の6回のワクチン接種が必要です。
なお、狂犬病など海外渡航の予防接種医療機関については、予防接種実施機関(厚生労働省検疫所)をご覧ください。
小さいお子さんは動物と遊びたがる傾向があり、また咬まれたことを保護者に伝えない可能性があります。特に感染・発病リスクが高くなりますので、予防接種を検討してください。
英国、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー、グアム、ハワイ、スカンジナビア半島の国々など、これらの島国を中心とした地域は長い間発生がなく、厚生労働省が清浄地域(狂犬病の発生していない国)として指定しています。最近では、2013年7月に日本と同じ清浄地域とされていた台湾において野生動物(イタチアナグマ)における狂犬病の流行が確認されました。
世界保健機構(WHO)などによると世界では、アジア、アフリカ、中南米を中心に年間5万5000~6万人の狂犬病の死亡者が報告されています。各地域では以下の動物から感染する可能性がありますので渡航中はむやみに動物に手を出さないようにし、また、咬まれないよう注意してください。
流行地域 | 感染原因となる主な動物 |
---|---|
アジア、アフリカ | 犬、ネコ |
アメリカ、 ヨーロッパ |
キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ、ネコ、犬 |
中南米 |
犬、コウモリ、ネコ、マングース |
※海外の感染症の流行状況については、FORTH(厚生労働省検疫所)、または外務省ホームページをご覧ください。
日本では、1950年に狂犬病予防法が施行され、犬の登録と年1回の予防接種が義務付けられてから、国内では人で1956年(昭和31年)、動物では1957年(昭和32年)の猫を最後に狂犬病の発生はありません。これは国内で感染し、発症した例が無くなったということですが、海外で犬などに咬まれ、帰国後に狂犬病を発症する事例(輸入感染事例といいます)は発生しています。最近では、2020年(令和2年)5月に、フィリピンから来日した方が国内で狂犬病を発症しました。この方は現地で犬に咬まれ、感染したと推定されています。
最近の輸入感染事例 | ||||
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報告年 | 渡航先 | 発症者 | 感染原因 | 備考 |
1970年 | ネパール | 1名 | 犬の咬傷 | |
2006年 | フィリピン | 2名 | 犬の咬傷 | 咬傷後のワクチン接種なし |
2020年 | フィリピン | 1名 | 犬の咬傷 |
1956年(昭和31年)以降、日本国内で感染した患者の報告はありません。現在のところ、国内で犬に咬まれて狂犬病に感染するリスクは非常に低いと考えられます。しかし、動物に咬まれたときは破傷風などに感染する可能性があります。国内で犬などに咬まれた時も、傷口をよく洗ったうえで医師に相談してください。
また、飼い犬が人を咬んだら届出が必要です。詳しくは、さいたま市動物愛護ふれあいセンター(お住まいの自治体の動物管理センター等)へご相談ください。
万が一、日本で狂犬病が発生した場合に迅速な対応をとるために日頃から飼い犬がどこに何頭いるのかを把握しておくことはとても重要です。また、飼い犬に狂犬病の予防注射を接種することで犬でのまん延が予防され、人への被害を防ぐことができます。
犬を飼う方(管理者)は、犬の生涯1回の登録をして、毎年1回狂犬病予防注射を受けさせましょう。
登録と狂犬病予防注射については犬の登録と狂犬病予防注射をご覧ください。
保健衛生局/健康科学研究センター/保健科学課
電話番号:048-840-2250 ファックス:048-840-2267