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更新日付:2023年5月3日 / ページ番号:C095244

第34回企画展「自然塗料「赤山渋」~かつての郷土特産物~」展示Web解説 その2

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第34回企画展「自然塗料「赤山渋」~かつての郷土特産物~」 展示Web解説 その2

令和4年3月5日から5月8日まで開催した、第34回企画展「自然塗料「赤山渋」~かつての郷土特産物~」の展示解説を、3回に分けてご紹介します。

3.柿渋をつくる

柿渋の生産工程

柿渋の生産工程は大きく「収穫」「仕込み」「発酵」「圧搾(あっさく)」「貯蔵・出荷」の5つに分かれます。
まず柿の木から渋柿を「収穫」し、収穫した渋柿を搗(つ)いて砕いて「仕込み」、搗き上がった渋柿を1日に2~4回かき混ぜながら3日~1週間かけて「発酵」させ、石の重みやキリンと呼ばれる器具を用いて「圧搾」し、直射日光の当たらない風通しのよい渋小屋や納屋で「貯蔵」、そして「出荷」されます。
それぞれの工程で用いる道具は一般的な農家にあるものがほとんどですが、中には「ドウ」「レンダイ」「ハンギリ」など、柿渋作りに特化した道具も存在します。

一、収穫

柿渋にする際の収穫時期は秋ではなく、カキタンニンの含有率が最も高くなる8月のお盆の時期になります。
丁度農閑期に当たりますので、自分の村や近隣の村から人を雇って、一連の作業を手伝ってもらっていたようです。
なぜなら、収穫に適した期間は1週間ほどと短く、また、収穫するとその日のうちに仕込みを行わないと腐ってしまうからです。
そのため短期間で多くの人出を必要としました。
さいたま市内の村に残された江戸時代後期の古文書にも、誰をいつ何日雇ったかを記録した帳簿が残っており、報酬を支払うのに使ったのだろうと思われます。

低いところになった柿は手で捥(も)いで収穫しますが、高い位置にあり木に登っても取りづらいところにある柿は、竹でできた「クッパサミ」、または「ツッパサミ」、地域によっては「パッパサミ」とも言いますが、それを使って収穫します(柿もぎり)。
先が二又に分かれており、柿の実の根本の枝に狙いを定め、ねじるようにして枝ごと折って採ります。
一見乱暴そうに見えますが、実が多くついた枝は翌年実がつきづらく、折ってしまった方が樹形が整い、木全体の実のつき方が良くなるのです。

柿もぎり
クッパサミを用いた柿もぎり

二、仕込み

収穫が終わると、次は仕込みです。
渋柿の実を臼と杵で搗いて砕きますが、熟していない柿は非常に固いので大変な重労働です。
明治から大正期には粉砕機という、石の歯車が内蔵された機械を用いて砕いていたようです。

柿の実を潰す 粉砕機

柿の実を搗いて砕く

粉砕機

そうして砕いた柿の実を「トウゴ」と呼ばれる大きな樽に入れ、水を加えます。
赤山渋の場合は見沼代用水の水を用いていました。
ぬるめの温度が柿渋の発酵に丁度良いとか、鉄分を多く含むから良い色が出るとか、そういった言い伝えが残っています。

三、発酵 

柿の実と水をかき混ぜたものを「モロミ」と言いますが、この「モロミ」を発酵させていきます。
空気に触れると発酵が進むのですが、3日間から1週間ほどかけます。
その間、1日に2~4回、「フンゴミ」という、足でかき混ぜる作業を繰り返します。
放置して発酵が進みすぎると、空気に触れている箇所から腐ってしまうからです。

フンゴミ
フンゴミ

良い具合に発酵を進めるためにはこの作業が欠かせませんが、トウゴの中身を全て、足を使ってかき混ぜなければならないので、大変な重労働でした。

四、圧搾

発酵したモロミを搾っていきます。この工程を「圧搾」と言います。
「ドウ」「レンダイ」「ハンギリ」そして「中蓋」という道具を用いて行います。

「ドウ」は樽のようなもので、縦方向の木と木の間に隙間がある構造をしています。
「レンダイ」は梯子のような形をしており、ドウを乗せる部分に横木が橋渡しされています。こちらも隙間のある構造をしています。
「ハンギリ」は平べったい桶のようなものです。
これらを図のように設置した上で、ドウの中にモロミを入れます。
そして、「中蓋」を被せて上から圧縮します。

圧搾
キリンを用いた圧搾

圧力をかける方法は時代や場所によっても様々で、自分の体重を使ったり、石の重りを使ったり、「キリン」というねじを使った道具を使ったりしていました。

澁を搾る図 おもりを使った圧搾

自分の体重で搾る図

(『広益国産考』(デジタルコレクション)より引用)

石のおもりで搾る図

(稲見(1984)より引用)

先に述べたとおり、ドウには木と木の間に隙間があるので、圧力をかけるとモロミが搾られ漏れ出します。
そうしてハンギリに溜まるのが柿渋となります。

五、貯蔵・出荷

柿渋は四斗樽やトウゴに入れられた後、直接日光が当たらず風通しのよい、渋小屋という柿渋専門の小屋か、納屋に保管されました。
収穫から貯蔵までは3日から1週間ぐらいを要したようです。
時期や地域によっては数年単位で保管することもあったようです。

出荷
柿渋を汲み出し、フルイでこす

長くそのままにしておくと、柿渋の表面に膜が張ってしまうため、柿渋を柄杓で汲み出し、フルイでこしてから出荷していました。

4.柿渋をつかう

では、柿渋はどのようなことに使われてきたのでしょう。

まずは防腐剤。漁網や家屋、即身仏(世の中の平穏を祈るために自らの命を捧げた僧侶のミイラ)への塗布に使われました。
柿渋は塗ると固まる性質があるので、漁網に対しては防腐剤のほか強靭剤としての役割もありました。
次に防水剤。紙衣、番傘など水に濡れるのを防ぐ目的で使用されました。
意外と多かったのが、清澄剤としての役割です。お酒や醤油の絞り袋に使われ、不純物をろ過するのに使われました。
他にも防虫剤としての役割もあったり、人びとの生活に無くてはならないくらい、幅広い用途で用いられてきました。

なお、最近になってからの用途になりますが、柿渋には吸着効果もあるので、ドラッグストアで見かけるように、せっけんやシャンプーにも使用されており、消臭剤としての役割も果たすようになりました。
最近の研究ではウイルスの除菌・抗菌・殺菌にも有用だとわかりつつあり、今後の研究が期待されます。

柿渋の様々な用途


その1 「1.柿と日本人」「2.柿渋のあゆみ」

その3 「5.「赤山渋」~かつての郷土特産物~」「6.赤山渋のそれから」

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