メインメニューへ移動 メインメニューをスキップして本文へ移動 フッターへ移動します


ページの本文です。

更新日付:2024年2月20日 / ページ番号:C084753

与野郷土資料館展示web解説(その34)

このページを印刷する

宇宙飛行士若田光一さんを遡ること200年、空を見上げた与野の天文研究家-稲垣田龍

長い群雄割拠の時代が終わると、江戸を中心に多くの学問や文化が発達していきます。
江戸近郊に位置していた与野の知識人たちは江戸から先進的な学問や多くの文化を吸収して、与野の地でそれを開花させていきます。

新しい西洋流の天文学を取入れて、いち早く「地動説」に共鳴した稲垣田龍(いながきでんりゅう)もその一人です。
田龍は寛政元年(1789)鈴谷の名主家に生れ、幼くして兵法や武術に関心を持ち、平賀源内(ひらがげんない)の門人で各地を歩いて人々に星を教えた朝野北水(あさのほくすい)に従って天文暦学の研究を本格的に始めました。
いち早く当時最先端の「地動説」を受け入れたようで、田龍が書写した「天文図」はこの地動説に基づく天体図です。中央の太陽の周りに水星・金星・地球・火星・木星・土星とそれぞれの公転周期や自転周期、太陽からの距離、軌道の長さなどが記入されており、注目に値するものです。

天文図
地転新図附属天文図(弘化3年、1846)
中央に太陽。その外周に水星、金星、地球と並ぶほか、尾を引く彗星の軌跡も描かれています。

この天文図をよく見ると、「地球全径三千二百一十里 周囲一万令令八十里 一周三百六十五日余 自転一日弱」
「土星ハ大サ木星ニツギ淡赤色ニシテ大輪アリ」「月ハ海陸山谷等ノ形勢 吾地球ト異ナルコトナシ 是ミナ望遠鏡モテ見ル所ナリ」
「月一周二十七日余 距離一十万里余」といった今なら誰でもが知っていることをすでにこの天文図では記しています。

 天文図
地転新図附属天文図(一部)

上の写真をよく見てください(拡大版はこちらから)。中央下部のひときわ大きい赤丸が地球で、その上部にが金星が描かれていますが、金星の周囲に「周期距離不詳」とされる衛星とその軌道が描かれています。
当時、金星に衛星が存在するか否かが学者の間で論争になったことがありました。この天文図の原本を描いた人物はその論争を知っていてここにそう記入したのかもしれません(現在では、その衛星は存在しなかったというのが定説だそうです)。
その意味でもこの天文図は貴重な資料となっています。

当時の最先端であり、かつそれまでの常識を覆す考え方である地動説を受け入れ、地元与野でそれを広めようとした姿を垣間見ることができるかもしれません。
田龍はこれより以前の文政4年に待野大梁という人物が作成したと思われる大天文図(縦320cm、横780cmの巨大星図)の写しも残しており、天文研究に対する並々ならぬ意気込みが感じられます。

巨大天文図
天文図(大判)

その名声から、教えを請うものが数百人いたといい、謙虚で徳業を以って弟子を率いるなどしていましたが、文久元年(1861)12月に73歳で没し、鈴谷の妙行寺に葬られています。「真僊玄節居士霊」とあるのが田龍の墓石で、墓碑銘は小泉蘭斎(こいずみらんさい。浦和の儒者、明治期の浦和郷学校の教師)の撰文と書です。

稲垣田龍墓
稲垣田龍の墓(鈴谷・妙行寺)

田龍は死後も鈴谷の人々に慕われ、鈴谷の天満宮には近年顕彰碑も建立されています。
稲垣田龍の碑
稲垣田龍先生の碑(鈴谷・天満宮)

さて、田龍の活躍から約200年後、さいたま市に再び宇宙にあこがれる人物が現れました。
そう、皆さんご存知の宇宙飛行士若田光一さんです。

宇宙航空研究開発機構特別参与の若田光一さんは、昭和38年さいたま市の生まれ。市内の小中高を卒業後、平成8年に日本人初のスペースシャトル・ミッションスペシャリストとして搭乗。平成12年には日本人として初めて国際宇宙ステーション(ISS)建設に参加しています。平成21年にはISS長期滞在クルーとして日本人初のISS長期滞在を経験。平成25年からは長期滞在クルーとしてISSに188日間滞在し、その後半の長期滞在では日本人初のISS船長として、クルーの指揮をとりました。
今後は、令和4年打上げ予定のISS長期滞在ミッションへの搭乗も決定しています。
若田光一さん
「キューポラ」(ISSの観測窓)から船外を眺める若田光一さん(平成26年)
(画像提供:JAXA/NASA)

稲垣田龍という人物が江戸時代のさいたま市にいたからこそ、後に若田さんが宇宙に興味を持ったのかもしれません。
皆さんも天気の良い日には、限りなく広がり、多くの星がまたたく夜空を見上げてみたらいかがでしょうか。


(その33) 明治時代、与野で栄えた製糸業

(その35) 与野郷土資料館の収蔵庫大公開!!

地図情報をスキップする。

地図情報

地図をご覧になる場合は、下記リンクをクリックしてください。(Googleマップが新しいウィンドウで開きます。)

関連ダウンロードファイル

GET ADOBE READER

PDFファイルの閲覧にはAdobe Reader(無償)が必要です。同ソフトがインストールされていない場合には、Adobe社のサイトからAdobe Readerをダウンロードしてください。

この記事についてのお問い合わせ

教育委員会事務局/生涯学習部/博物館 
電話番号:048-644-2322 ファックス:048-644-2313

お問い合わせフォーム