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更新日付:2022年2月23日 / ページ番号:C081745

文化財をつたえる

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bunkazaiwotsutaeru

文化財の今

今日まで守り伝えられてきた文化財は、地域の豊かな歴史と文化を物語ってくれます。そして、
文化財は私たちのまちの歴史的・文化的・自然的環境を形づくる重要な要素であり、身近な地
域への誇りと愛着を育む大切なよすがでもあります。
このような文化財の価値とはたらきは、文化財がそこにあるだけでは、十分に真価を発揮して
はくれません。文化財の価値を引き出し、魅力を高めて、多くの方がその価値を享受できるよ
うにすることが必要です。また、文化財をそこにあるままにしておくだけでは、劣化が進み、
次第に形を変え、やがて文化財は消滅してしまいます。
受け継いだ文化財をよりよい状態で次の世代へと伝えること。多くの方に文化財の価値と魅力
を伝えること。文化財を「つたえる」取組を御紹介します。
 

修復 

どんなに丈夫そうにみえる文化財も、幾星霜を経て今日に伝わったもの。時の経過の中で、多
かれ少なかれ、傷みや変質が生じています。そうした傷みや変質の進行を押し留め、損傷や劣
化が進んだところに適切なタイミングで修理や補強を行うことで、文化財は今日に伝えられて
きました。
こうした営みを総称して、修復といいます。過去の人々が繰り返してきたその営みを適確・適
切に行うことが、文化財を受け継いだ私たちの果たすべき役割です。
修復の仕方は、その文化財がどのような性質のものか、特にどのような材質でできているのか、
さらにその後どのような場所に置かれていくのかによって、大きく変わります。

こんなことをやっています―取組紹介

金属製品の保存処理と修復
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 ☞ 「和同開珎」の保存処理   鉄製品の保存処理


         


きずな

多くの文化財は、人と人との関わり合いの中で生まれ、継承されてきました。その最も顕著な
ものが、「わざ」の文化財です。「所作」や、まう・かなでる・うたうなどもここに含まれま
す。たとえば、獅子舞の場合、獅子の舞い手のほかに、ささら、笛方など大勢の人が一体となっ
て演じられます。獅子の舞い方一つとっても、一朝一夕で身に付くものではありません。
時に躍動し、時に静寂に身を任せる獅子の所作は、修練を積み重ねて身に付くもの。獅子頭か
ら足先に至るまで、動かし方、動き方はまさに「わざ」の集合体です。先輩の「所作」を見た
り、コツを伝えられたり。伝える人と伝えられる人、それぞれがいないと、「わざ」は途絶え
てしまいます。
こうした「わざ」の文化財は、地域コミュニティの中で、きずなを深めながら継承されてきま
した。しかし、コミュニティの変容や価値観の多様化などによって、「伝えられる人」つまり
後継者の不足・不在に直面するようになりました。「わざ」の文化財を受け継ぐ方々は、「わ
ざ」を途絶えさせずに次世代に伝えていこうと、さまざまな工夫と努力を積み重ねておられま
す。
ところが、新型コロナウイルス感染症の蔓延は、そうした努力を吹き飛ばし、「わざ」の継承
に深刻なダメージを与えました。人と人がじかに接して伝え合うことは、感染症を拡大させる
危険性が懸念され、「わざ」の継承の活動を休止せざるを得なくなったのです。このままでは
自然消滅してしまう。継承の現場は、これまで以上に深刻な危機感と焦燥に包まれています。
しかし、手をこまねいているばかりではありません。全国では、オンラインで「わざ」の継承
を試みる活動が始まっています。継承する方々(保持者・保持団体、保存会)の間でも、感染
症対策を徹底した上で、安全に行える形で継承の取組を再開する動きも始まりました。
躍動する舞い、妙なる調べに、大勢の方に直接、接していただけるようになるには、もう少し
時間がかかるかもしれません。けれども、そうした日が必ず、そして間もなく訪れることを信
じて始まった、伝統の「わざ」を伝える取組をご紹介します。

こんなことをやっています―取組紹介

コロナ禍のもとで「わざ」を伝える
akihasasarasisimai tuujou
 ☞ 「秋葉ささら獅子舞」保存会の取組


         

保全

一つの例を挙げましょう。今からおよそ100年前、桜区にある国指定特別天然記念物「田島ケ原
サクラソウ自生地」では、毎年4月中旬から5月中旬にサクラソウの見ごろを迎えていました。
それが今や、3月下旬から4月中旬。100年の間に、サクラソウの見ごろが 1 か月近く早くなって
います。
これは、サクラソウたちが年々せっかちになっているからではありません。気候の温暖化の影響
です。100年以上前からの気象観測データのある熊谷気象台での気温をみてみると、100年前の19
20年(大正9年)の3月の平均気温は6.3度、年平均気温は13.8度でした。ところが、2020年(令和2
年)3月の平均気温は10.2度、年平均気温は16.2度。単純に比較しても、100年の間に3月の月平
均で3.9度、年平均で2.4度も気温が上昇したことになります。
こうした気温の上昇は、サクラソウの開花時期を早めるとともに、サクラソウと競合する他の植
物の生育をも早めています。さらに、サクラソウよりも草丈の高い植物の成育の旺盛化によって、
サクラソウが他の植物の日陰になる時期も早まっています。「見ごろ」という、人間がサクラソ
ウを鑑賞するのに最適な時期は、どんどん短くなり、同時に、開花期にサクラソウが十分に日光
を受けられる時間も短くなっているのです。田島ケ原サクラソウ自生地は今、地球規模の気候変
動の影響をまともに受け、大きな変容の渦中にあります。
このような地球規模での気候変動をはじめ、文化財をつたえる環境が大きく変容している中、そ
の影響が文化財の保全に及ぼす影響を極力なくすための取組が続けられています。

こんなことをやっています―取組紹介

環境変化のもとで
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 ☞ 田島ケ原サクラソウ自生地保全の取組


       

 


 

環境整備

対症療法的な保存の取組を積み重ねた上で、環境変化や文化財の傷みへの抜本的な対応が必要と
なったとき、文化財の保存環境を改善する取組が行われます。特に、史跡や天然記念物など、そ
の土地と不可分な文化財の場合、文化財自体の保存のための措置(修復など)とあわせて、保存
に支障となる要素の除却や中長期的な保存に必要な措置を講じ、さらに文化財の価値をわかりや
すく伝え、訪れた方が安全にその価値を享受できるようにします。これを「環境整備」といいま
す。
さいたま市内では、国指定史跡「見沼通船堀」(緑区)、埼玉県指定史跡「岩槻藩遷喬館」(岩
槻区)、さいたま市指定史跡「内谷氷川社境内」(南区)・「氷川女體神社磐船祭祭祀遺跡」
(緑区)などにおいて環境整備が行われてきました。
但し、環境整備は史跡などのよりよい保存・活用のスタートではあっても、ゴールではありませ
ん。保存の技術は日々進歩し、文化財の調査も進んで、新たな発見がなされる場合もあります。
その時点で最善の方法を選択して環境整備が行われますが、時間の経過によって、より良い整備
方法が開発されたり、慎重な検討によって復原したところに異なる方法が適切であることが明ら
かになる場合があるわけです。さらに、整備の手を加えたところ自体も時間の経過と共に劣化し
ていきます。環境整備を行った上で、適切な管理を行い、部分的な補修を繰り返した上で、全体
の整備を再度行う必要がやがて生じます。
保存を確実にした上で、安心・安全に、そしてわかりやすく楽しく史跡等を活用していただくた
めに、一定期間ごとに整備(再度の整備)を繰り返していくことになります。

こんなことをやっています―取組紹介

国指定史跡「見沼通船堀」の再整備 国指定史跡「真福寺貝塚」の整備に
向けた発掘調査
minumatuusenbori sinpukujikaiduka

国指定史跡「見沼通船堀」(緑区)では、
平成6年度から9年度にかけて一度環境整
備が行われました(第一次整備)。それ
から20年近くを経て、整備箇所の経年劣
化が随所で生じ、周辺の環境やゲリラ豪
雨の多発などの気象の変化も顕著になっ
てきました。そこで、平成27年度から再
度の整備事業(再整備)が進められてい
ます。

国指定史跡「真福寺貝塚」(岩槻
区)では、縄文時代のムラとその
存続基盤を将来に伝えるために、
史跡指定地の拡大(追加指定)と
指定地の公有地化が進められてい
ます。そしてこれと並行して、環
境整備に向けて縄文ムラの実像解
明を目指した発掘調査が平成28年
度から続けられています。
☞  国指定史跡「見沼通船堀」の
再整備工事を実施しています

国指定史跡真福寺貝塚調査
最前線



 

共感

文化財を伝えていく上で、保存のためのさまざまな措置とともに欠かすことのできないこと、そ
れは、多くの方に文化財があることの意義を感じていただくことです。そのためには、まず文化
財があること自体を知っていただき、次に文化財の魅力や価値を感じ取っていただくことが大切
です。その上で、今文化財から受ける恩恵を、将来の人々にも同じよう享受してほしいと思うこ
と、ここに文化財が保存され伝えられていくことへの共感が生まれます。
一つひとつの文化財を適切に、確実に保存し、その価値と恩恵を将来にわたって享受できること
は、文化財をつたえる基礎です。けれども、一つだけ、単体ではその価値が伝わりにくいもの、
魅力を感じづらいものがあるのも実情です。

文化財の魅力を感じ取っていただくこと。言うは易く、行うは難し。一つひとつの文化財の価値
と魅力を正確に、わかりやすく伝えることとともに、他の文化財や歴史的背景、あるいは周辺の
景観・立地などと関連付けることで、文化財の意義がより深く感じられ、その魅力が高められる
よう、工夫や新たな取組も不可欠です。
価値観が多様化し、情報の伝わる回路も複雑化する中、文化財の保存に共感していただけること
を願いながら、文化財の魅力を伝える試みを手探りで進めています。この「文化財をつたえる」
もその一環です。
 

文化財保存活用地域計画

平成30年(2018)に行われた文化財保護法の改正で、文化財に関する新しい「しくみ」が創出さ
れました。「文化財保存活用地域計画」です(文化財保護法第183条の三)。これは、地域に伝わ
る文化財を総合的・一体的に保存・活用する基本方針とそれを具体化する実施計画を定めるもの
です。そしてそれを所有者と行政だけでなく、多くの方が共有することで、地域に伝えられた文
化を社会全体で保存し活用していく基盤となります。
さいたま市教育委員会では、本市の歴史文化を将来にわたって継承していく上で、この計画を策
定する効果は大きいと考え、令和3年度から計画の策定事業を開始しました。一つひとつの文化
財の価値と魅力を高めるとともに、まだまだ知られていない大切な歴史的・文化的遺産を保存し
活用していくことで、過去の人々が残し伝えてくれた遺産を将来に伝え、さらに今私たちが生み
出し紡ぎつつある歴史と文化を将来に伝えながら、それらを私たちと将来の人々が享受し活かし
ていくこと。実効性のある計画となるよう、計画の作成を進めてまいります。
計画作成の進み具合は、さいたま市ホームページなどで随時お知らせします。
    ☞ 「さいたま市文化財保存活用地域計画」を作成しています

umihanai,yamamonai

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