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更新日付:2021年4月16日 / ページ番号:C077273

中央区(与野)の民話シリーズ(その1) 諏訪坂の怪

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中央区(与野)の民話シリーズ(その1)

諏訪坂の怪

諏訪坂は昭和初期に改修され、現在みられるような切り通しの県道与野宗岡線と呼ばれる幹線道路となった。
この話は改修以前の険しい山坂だったころのものである。

ある日、馬子の太郎兵衛は、荒川の羽倉河岸から塩ニ俵を馬の背にくくり付けて、諏訪坂の難所にさしかかった。
塩荷はどっしりと重く、なかなか思うように登れない。思案にくれていると、後ろの方で「あと押ししてやろうか」という声がした。
「これはありがたい」と太郎兵衛が後ろを振り返って、ビックリ仰天。そこに立っていたのは、なんと見上げるような一つ目の大入道ではないか。   
「積荷が重すぎるようだな。その塩一俵よこせ。そうすれば荷は軽くなり登れるぞ」
それを聞いた太郎兵衛、体はすくみ恐ろしさも手伝って一俵だけやることにした。
すると大入道は、塩俵をペロリとひと飲みにした。
驚いた太郎兵衛は馬の手綱を引き大急ぎで坂を登り始めた。
するとまた、「おーい、まて。この塩はとてもうまい。ついでにもう一俵よこせ」と大声で呼び止められた。
ビックリした太郎兵衛は、「とんでもない。そんなことをしたら荷がなくなってしまう」といい返した。
「なにっ、駄目だというのか」大入道は凄みを増して叫んだ。
「命が危ない」と思った太郎兵衛は、仕方なく残りの一俵もやることにした。
すると大入道は、この塩俵もペロリとひと飲みにした。
ぐずぐずしていてはどんな事態になるかわからない。一刻も早くこの場を逃げ出そうと考えた太郎兵衛は、大あわてで馬にまたがった。
                 一つ目入道
その時、「おーい、馬子。その馬も食わせろ」と大入道の声がした。
「とんでもない。この馬まで食われたらおまんまの食い上げだ。勘弁してくれ」太郎兵衛は悲痛な声で叫んだ。
しかし、大入道は太郎兵衛の足をつかみ馬から引きずり下ろした。そして、馬を一つかみでカッと開いた口の中へ放り込み、ガブリと飲み込んでしまった。
次に大入道は、真っ青になってガタガタと震えていた太郎兵衛をじっとみすえると「おまえもうまそうだなぁ。今度はおまえの体をいただこう」といって大きな手でつかみかかってきた。
危うく身をかわした太郎兵衛は、諏訪坂をかけ登り、道端の古井戸屋形の上に隠れた。
太郎兵衛は、大入道をうまくだまし井戸の中へ落としたが、大入道は這い上がって追ってきた。
太郎兵衛は、また適当な隠れ場所を探し逃げ続け、一軒の農家にもぐりこむと棚木の上に這い上がった。
「どこへ逃げ失せたか、すばしっこいやつめ」大入道はそう言って入ってきた。
しばらく、あたりを探していたが、「ああ疲れた。少しねむくなってきたなぁ」と独り言をいい、かまどにすえてあった大釜を見付けると「これは気持ちが良さそうだ」といって中へ入るなり、グゥオー、グゥオーと寝込んでしまった。
それを見ていた太郎兵衛は、素早く降りてくるなり大釜の蓋をして、その上に大石を持ってきて積み上げた。そしてかまどにいっぱいのまきを詰めて火をつけた。
大入道は何やら熱くなってきたため、目を覚まし蓋を押上げようと体をバタつかせたがピクリともしない。しばらくドタバタと大暴れしていたが、ふたはついに開かず、さすがの大入道も往生してしまった。
そこで、太郎兵衛が大入道の腹を裂いてみたところ、塩俵が二俵そっくりころがり出て、次にヒヒーンと大きくいななきながら馬も飛び出してきた。
太郎兵衛は大喜びで我が家に帰ったという。

平成6年3月与野市教育委員会発行 与野市文化財図録「与野の不思議探検」より(イラストも)

「与野の不思議探検」には紹介した民話を含め41の「不思議」が掲載されています。与野図書館で借りることができます。

現在の諏訪坂です。
諏訪坂1 諏訪坂2

中央区(与野)の民話シリーズ
その2 二度栗山と弘法大師は こちら
その3 送り地蔵は こちら
その4 長伝寺の水飲み龍は こちら
その5 お化け地蔵は こちら
その6 阿弥陀様とへびは こちら
その7 大戸貝塚は こちら
その8 妙行寺と二つの巨木伝承は こちら
その9 長伝寺の厄除け開山は こちら

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