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更新日付:2021年4月16日 / ページ番号:C077481
天長年間(824~833)の秋の夕暮れ時、墨染の衣をまとい杖を頼りに与野の中里をとおりかかった僧侶があった。
一息入れようと路傍の石に腰を下ろし、ふと前を見ると一人の童が栗の木に登ってしきりに栗の実を落としている。
「愚僧にも一つもらえまいか」と僧が声をかけた。
童は落としたばかりの実を拾い集め、両手にいっぱいの栗を差し出した。
「袋があればもっと入れてあげるよ」そういって童は再び木によじ登った。
僧はことのほか喜び「純真な童よ。感謝のしるしにこの木に毎年二度づつ実がなるようお祈りしよう」と呟き、数珠を手に真言密経を一心に唱えた。
そして、「私は人々の難儀を救うため諸国を行脚している空海というもの。私が去ったあと、この石にお祈りし遍照金剛の御袖におすがりして、ご利益をうけなさい」と言い残して、何処ともなく立ち去った。
その後、不思議にもこの木は一年に二度づつ実を付けるようになり、この山を二度栗山と呼ぶようになった。
また、大師が杖を立てた跡からは霊泉が湧き出し「御加持水」と名付けられた。
この栗の木は明治初頭までありその後枯れたが、木にはしめ縄が巻かれ霊木としてまつられていたという。
平成6年3月与野市教育委員会発行 与野市文化財図録「与野の不思議探検」より(イラストも)
「与野の不思議探検」には紹介した民話を含め41の「不思議」が掲載されています。与野図書館で借りることができます。
中央区(与野)の民話シリーズ
その1 諏訪坂の怪は こちら
その3 送り地蔵は こちら
その4 長伝寺の水飲み龍は こちら
その5 お化け地蔵は こちら
その6 阿弥陀様とへびは こちら
その7 大戸貝塚は こちら
その8 妙行寺と二つの巨木伝承は こちら
その9 長伝寺の厄除け開山は こちら
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