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更新日付:2021年4月16日 / ページ番号:C077490

中央区(与野)の民話シリーズ(その4) 長伝寺の水飲み龍

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中央区(与野)の民話シリーズ(その4)

長伝寺の水飲み龍

鴻沼周辺の村々は、古来より水害で悩まされた。
明治40年、同43年の大水害は、今でも古老の間で語り継がれている。
水害といえば、長伝寺に不思議な話が伝えられている。
ある夜のこと、住職が夕食を済ませ本堂へ行くと、欄間の龍がいなくなっていた。
ビックリした住職は、己の目を疑いながらも小僧を呼び、寺中くまなく探してみたが見つけることができなかった。
そこで、寺の檀家衆に知らせ再度探したが見つからず、子の刻になったのであきらめて帰っていった。
あくる日、小僧が本堂の掃除に行き「あっ」と驚いた。昨夜いなくなった龍が、何事もなかったように欄間の中におさまっている。
「龍が、龍がいましたよ」
「なに、龍がいると。それは本当か」
住職が本堂にかけつけると、確かに龍は欄間の中におさまっている。
ところが、次の夜も、その次の夜も龍がいなくなった。そのたびに皆で探し回ったが見つからない。
そこで檀家衆は本堂に集まり相談をした。なかでも、白髪の名主が「皆の衆、こうやって毎晩同じ騒ぎをしてもしょうがない。この際、当番を決め交替で見張ることにしよう。そうすれば、いたずら者を捕らえることもできよう」といったので、皆は賛同し、さっそく当番表を作った。
そして、次の晩から徹夜で欄間を見張り始めたが、特別変わったことも起こらない。
とうとう十日目に打ち切ることとなった。
ところが、その晩にかぎり龍がいなくなった。住職は、もう小僧にも檀家衆にも知らせず、本尊の後に隠れ欄間のようすをうかがうことにした。
しかし、連日の疲れが出てとうとう寝入ってしまった。やがて眼を覚まし「欄間は……」と見上げると龍が何事もなかったようにいるではないか。
「しまった」と住職は叫んだが、仕方がない。
結局もう一晩見張ることに決めた。
次の夜のこと、亥の刻を少し回った頃、恐ろしいことが起こった。欄間の龍が少し動いたかと思った瞬間、目がギョロリと輝きゆっくりとあたりを見回した。
だれもいないのを確かめ、青黒い鱗をきしませぬるぬると下へ降りてくる。そして太い体を左右にくねらせ、本堂から外へ出て行った。
龍は寺の門を出ると、あたりを悠々と圧しながら川の方へ向かい、そして大きな首をザヴァーンと突っ込んだ。
ほどなく「グウォーン、グウォーン」と大きな音を響かせ波を立てて水を飲み始めた。
                    長伝寺水飲み龍
雨続きで増水していた川の水はみるみる減り、周りの水没しかけていた田も畔ももとどおりになった。
じつは、この当時、武蔵国一帯が連日の雨で田畑が水に浸かり作物が腐って、人々は困り切っていたのだ。
しかし、与野の田畑だけはこの水害から免れていたため、人々は不思議に思っていたのだ。
住職は、この様子を見ながら「この龍のお陰であったのか」と感謝せずにはいられなかった。
翌日、住職は本堂に檀家衆を集め、昨夜の出来事を話した。
皆は、びっくりしたり、感謝したり、不思議がったりで、欄間の龍に手を合わせたという。

平成6年3月与野市教育委員会発行 与野市文化財図録「与野の不思議探検」より(イラストも)

「与野の不思議探検」には紹介した民話を含め41の「不思議」が掲載されています。与野図書館で借りることができます。

中央区(与野)の民話シリーズ
その1 諏訪坂の怪は こちら
その2 二度栗山と弘法大師は こちら
その3 送り地蔵は こちら
その5 お化け地蔵は こちら
その6 阿弥陀様とへびは こちら
その7 大戸貝塚は こちら
その8 妙行寺と二つの巨木伝承は こちら
その9 長伝寺の厄除け開山は こちら

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