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更新日付:2016年1月22日 / ページ番号:C045151
健康科学研究センター環境科学課では、毎月市内の河川で水質調査を行っています。
写真は笹目川の市立浦和南高校脇地点の風景です。澄んだ冷たい空気が冬を感じさせます。
季節を問わず色鮮やかなものや動きのあるものは愛でる機会が多いですが、今回は普段あまり出会うことのない水の中の小さな生き物たちに注目してみたいと思います。
川底を見てみると石などの表面に、褐色のモヤモヤしたものが付着していることが分かります。
今回はこの部分と一緒に川の水を汲んできました。
取ってきた水を眺めてみると、何やら小さなものが動き回っていたり、細長い緑色の糸のようなものが見つかりました。
まずはこれらを顕微鏡で観察してみます。
素早く動き回っていたものはミジンコの仲間でした。(左:マルミジンコの一種、右:ケンミジンコの一種)
ミジンコは大きく分けるとエビやカニ、昆虫などと同じ節足動物です。
また細長い緑色のものは、緑藻の仲間のアオミドロ(Sporogyra属)でした。
緑藻類は緑色をした葉緑体持っており、アオミドロは美しくらせんを描く葉緑体が特徴的です。
次に、石に付着していたモヤモヤの部分を観察してみると、ミカヅキモ(Closterium属)やイカダモ(Scenedesmus属)といった緑藻の他に、黄褐色の様々な形をした珪藻が見つかりました。
珪藻類はケイ酸から成る殻をまとっており、種類により異なる形や模様が見られます。
この殻だけを残す処理を施すと、特に模様が良く見えるようになります。(左:未処理、右:処理済み)
この殻の模様を利用して珪藻の種類が区別できます。より細かい構造を知るためには電子顕微鏡で観察を行います。
特徴的な形、模様をした珪藻をいくつか見てみましょう。
○ 細長い殻をもち、多数が集まり群体をつくるBacillaria属の珪藻。(右は電子顕微鏡写真)
群体が伸び縮みすることによってダイナミックに移動していきます。
○ 円筒形の殻が連なるMelosira属の珪藻。(右は電子顕微鏡写真)
○ 三日月状に湾曲するCymbella属の珪藻。(右は電子顕微鏡写真)
○ 金平糖のような独特な形をしている珪藻。 ○ 円い形をしたCyclotella属の珪藻。
(Hydrosera triquetra ) 放射状の模様が見られます。(電子顕微鏡写真)
○ クサビ形をしているGomphonema属の珪藻。(右は電子顕微鏡写真)
○ 落ち葉のような形をしたSurirella属の珪藻と、楕円形のCocconeis属の珪藻、舟形をしたNavicula属の珪藻。(右は電子顕微鏡写真)
○ 縞模様をもつDiatoma属の珪藻 ○ 鳥の羽のようなハネケイソウ(Pinnularia 属)
このように珪藻は種によって形の特徴がはっきりしています。
また、海には海の珪藻、川には川の珪藻が見られ、さらには水質といった環境の違いによっても生息している珪藻の種類が異なります。
これらのことから、観察された種類によって生育環境や水の汚れの程度を推定する指標生物として珪藻は利用されます。
川から採取してきた水を数滴観察するだけでこれほど多くの小さな生き物たちを観察することができました。
普段はなかなか気が付かない、川の水のおもしろい一面を垣間見ることができた気がします。
参考文献:日本の水道生物-写真と解説-/日本水道協会
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