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更新日付:2020年8月5日 / ページ番号:C074665

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ミクロの世界 家庭用マスクの観察

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電子けんび鏡を使って日常で見られるものを観察するシリーズ。今回は家庭用マスクを観察します。

はじめに

新しい生活様式が広まっていく中、家庭用のマスクがますます注目されるようになってきました。今回は花ふんやウイルスをふせぐ家庭用マスクに注目して、そのミクロの世界を観察してみることにしましょう。

~ふしょくふ製(せい)マスクの歴史(れきし)と進化~

「マスク」と聞いてみなさんはどういったマスクを思いうかべるでしょうか。今、私たちの身近で最も使われているのは、花ふんしょうやかぜ用としてお店で買うことのできる「プリーツ(折りひだ)型のふしょくふ(せんいをからませたシート)製マスク」ではないでしょうか。このマスクは、およそ50年前の1973年(昭和48年)に売り出され、それから50年近くも変わらず使われ続けています。この間、日本ではインフルエンザや花ふんしょうが流行し、そのたびにマスクは改良されてきました。また、2000年代になると立体型のマスクが登場し、機能(きのう)だけでなく、着けごこちや見た目の良さにもこだわったマスクが登場することとなります(※1)。最近では、いろいろな機能をを追加したマスクもあちこちのお店でみられるようになりました。夏に汗をかいてもすぐにかわくもの、さわると冷やっとする材料を使ったもの、マスクについた菌(きん)をふやさない機能のあるもの、気になるニオイを消す機能のあるもの、「しがい線」をふせぐ機能があるもの、カラーデザインのもの、生地(きじ)や見た目のよさにこだわったもの…これだけいろいろあるとつけるマスクを選ぶのも楽しくなってきますよね。これからは着る服やクツを毎日選ぶのと同じように、いつどこに行くかによって今日つけていくマスクをえらんでいく!なんてことにもなっていくかもしれないですね。

家庭用マスクのイラスト図

図1 プリーツ型家庭用マスク

(※1)マスクについて 一般社団法人 日本衛生材料工業連合会ホームページ

~ホコリやチリをとらえるしくみ~

こうした家庭用マスクですが、その目的はあくまでも身につけたときに、外側からホコリやチリ、ばい菌などが入らないようにする、くしゃみやせき、おしゃべりをした時にまわりへ「ひまつ(口から飛び散るツバやしぶきなど)」が飛ばないようにすることにあります。そのため、きちんとすき間なく身につけることはもちろんのこと、ホコリやチリ、ばい菌などを入ってこさせない能力(のうりょく)をもつフィルター(大気中の不要物をとおさないシート)を使ったマスクを選ぶことが大切です。ホコリやチリが入ってこないようにするには、よりすき間のないフィルターが必要になります。ただ、こうした考えでいくと、お店で売れている家庭用マスクは入りこんでほしくない「さい菌」やウイルスなどに比べ、すき間が大きいため、つけても効果はあまりないのではないかと考えがちですが、実はちがいます。マスクはホコリやチリを糸のようなせんいにくっつけてとらえるしくみとなっているため、ホコリやチリが小さければ小さいほどフィルターにくっつきやすくなるのです(※2)。また、そもそも「さい菌」やウイルスなどは、空気中で10マイクロメートル(1メートルの100,000分の1)ほどの「ひまつ」として広がっていくことがほとんどのため、ふつうにお店で売られているようなマスクであれば、さい菌やウイルスはきちんとふせげていると言えそうです。

大きさの図

図2 ウイルスとマスク~その大きさとイメージ~

(※2)新型コロナウイルスや花粉症でのマスク装着に関する日本エアロゾル学会の見解, 日本エアロゾル学会, 2020年2月21日掲載

観察結果

説明が長くなってしまいましたが、さっそくマスクフィルターの表面を観察してみることにしましょう。

ふしょくふマスクのフィルター1
外国産ふしょくふマスクのフィルター(500倍)
ふしょくふマスクのフィルター2
国産ふしょくふマスクのフィルター(500倍)

どちらもお店でよく見かけるふしょくふマスクから取り出したフィルターの写真です。左の写真が外国産のもの、右の写真が国産のものですが、ほとんどちがいはありませんでした。それぞれ細かったり、ちょっと太かったり、いろいろな太さのせんいがふくざつにからみ合っている様子が確認(かくにん)できます。すき間の大きさは1つあたり20~30マイクロメートルほどになっています。大きさだけで言えば花ふんはぎりぎり入るか入らないかといったくらいのすき間です。

ふしょくふマスクの外側表面
ふしょくふマスクの外側表面部(100倍)
ふしょくふマスクのゴムひも
ふしょくふマスクのゴムひも(85倍)

フィルターをはさんでいる外側の表面部分と耳にかけるゴムひも部分も観察してみました。外側表面はフィルターとちがいすき間も大きく、100マイクロメートル程度の大きさとなっていました。同じ太さのせんいが重なり合い、たいらになっている様子が確認できます。一方、耳かけ部分は輪ゴムのような曲がったせんいがふくざつにからんでいるのがわかります。一つマスクをとっても部分ごとにいろんな形があることが分かりました。

続けてほかの種類のマスクも見てみることにしましょう。

ガーゼマスク
ガーゼマスク(75倍)

ガーゼマスクは写真に見られるような生地(きじ)がいくつも重なってつくられています(写真は一枚分)。一枚分のすき間は大きいですが、重なっていくことでホコリなどが入ってこないようなしくみになっています。きれいなあみ目が見えますね。

だっしゅう機能付きマスクのふしょくふフィルター
だっしゅう機能付きマスクのふしょくふフィルター(300倍)
だっしゅう機能付きマスクのだっしゅうフィルター
だっしゅう機能付きマスクのだっしゅうフィルター(950倍)

※だっしゅう機能付き:ニオイを消すことができる能力がある

だっしゅう機能が付いたマスクの様子です。左の写真は先の写真でも見たのと同じふしょくふ製のフィルターの様子です。このマスクはもう一枚だっしゅうフィルターというものが重ねられていて、これらは別々に分けることができます(表と裏の面と合わせて全部で4枚)。だっしゅうフィルターだけを観察してみた様子が右の写真です。だっしゅうフィルターのせんいを大きくしてみると各せんいの表面につぶつぶのようなものが確認できます。これはニオイ成分と反応してニオイをおさえる役わりをもつ部分になっていると思われます。

ウレタンマスク1
ウレタンマスクA(75倍)
ウレタンマスク2
ウレタンマスクB(75倍)

見た目がよかったり、着けごこちが良いと言われるウレタンマスクの観察結果です。マスク本体の写真はありませんが、左のウレタンマスクAは布でできたような、右のウレタンマスクはスポンジでできたようなさわりごこちになっていました。一言にウレタンそ材といっても、大きくして見てみると見た目がまったく異なることにおどろきます。左の写真は長いかみの毛をあんだときのようなかたちが見られました。右の写真はアニメに出てくる三角チーズのような穴のたくさん開いた様子が見られました。これらウレタンマスクは、写真の生地が一枚で2~3ミリメートルほどのあつさになっています。マスクBの穴の大きさは50~200マイクロメートルと他のマスクに比べると少し大きくなっています。

酸化チタン加工マスク内側
冷感ガーゼマスクの内側表面(65倍)
酸化チタン加工マスク外側
冷感ガーゼマスクの外側表面(75倍)

さわると冷やっとするという冷感ガーゼマスクも観察してみました。見たところ、ほかのマスクとはちがう特しゅなせんいを使っているようです。

今わたしたちの身のまわりでよく見かけるマスクについて、そのミクロの世界をちょっとだけのぞいてみました。使われている材料やつくり方の違いで一見同じように見えるものも違って見えたり、せんい一本一本に工夫がされていたりと知らなかったことが少しだけ写真をとおして見えてきたのではないでしょうか。

外出するときや教室の中ではまだまだ欠かせないマスクです。夏のあいだは特に熱中症(ねっちゅうしょう)になるおそれもあるので、いつも以上に注意しながら、ぜひ楽しい夏休みを過ごしてもらえればと思います。

この記事についてのお問い合わせ

保健衛生局/健康科学研究センター/環境科学課 大気係
電話番号:048-840-2265 ファックス:048-840-2267

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