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更新日付:2024年4月7日 / ページ番号:C100375

さいたま市立博物館展示web解説(江戸時代その1)

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さいたま市立博物館展示web解説(江戸時代その1)ー円空仏のはなしー

近世畸人伝 僧円空 挿絵

左の絵は、江戸時代後期の寛政2年(1790)に刊行された、『近世畸人伝(きんせいきじんでん)』という本の挿絵です(※1)。この本は、当時語り継がれていた、古今の風変わりな人物についての伝承をまとめたもので、そのうちの一人として紹介されているのが、今回取り上げる修行僧「円空(えんくう)」です。
この本によれば、円空は美濃国竹が鼻(現岐阜県羽島市竹鼻町)の出身で、幼い頃に出家(しゅっけ:仏門に入り僧になること)し、23歳で寺院を離れ富士山、白山で修行を行いました。持ち歩いていたのは鉈(なた)一丁だけで、修行のために、この鉈で仏像を作っていたとあります。左の挿絵は、飛騨国袈裟山千光寺(現岐阜県高山市)で、円空が立ち枯れた木に仁王像を彫っているところとのことです。

この円空、想像上の人物ではなく、実在した修験道(しゅげんどう)の修行僧です。これまでの調査や研究で、円空は寛永9年(1632)に生まれ、出家したあと、32歳頃に仏像作りを始めたことがわかっています。生涯で仏像12万体の造像を目標としていたと伝えられており、奈良県から北海道まで、近畿地方、中部地方や東日本を遍歴(へんれき)しながら仏像を作り、各地にのこしています。これまでに確認された仏像の数は4,500体以上あります。
円空が作った仏像は、刃物の跡も荒々しい、素朴で力強い外観と、優しい表情を持っています。その作品群は各地の寺院などに伝えられてきました。

『近世畸人伝』を国立国会図書館デジタルコレクションで見る
※1 画像出典:伴蒿蹊 著 ほか『畸人伝 : 5巻』[2],河内屋茂兵衛 [ほか]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2602910/1/38

埼玉県・さいたま市の円空仏

昭和30年代以降、円空がのこした仏像は「再発見」されます。経済成長や生活の近代化とともに、旧来の文化や生活に対する愛着や憧憬が意識されるようになり、いわゆる「民芸ブーム」が起こってくると、円空の作品のような素朴な小像も美術品としての評価が高まり、「円空仏」として展覧会などで取り上げられるようになりました。円空を知る人が増えたことで、各地の旧家やお堂などにある仏像が、円空の作品だったと気付かれるようになりました。
さいたま市域でも、昭和36年(1961)、円空を創作の目標としていた版画家の宗像志功(むなかたしこう)が、見沼区南中野の正法院を訪れ、境内の薬師堂に伝えられていた仏像が円空の作であると「発見」しました。埼玉県内でも初の事例だったこともあって、大きな話題となり注目を集めると、県内でも次々に「これも円空作ではないか」という報告が相次ぎ、存在が改めて知られるようになりました。現在、埼玉県内では約130体、さいたま市内では約60体の円空仏が見つかっています。
これらの像は、円空が当地を訪れた際に作ったものと考えられています。円空は元禄2年(1689)に日光を訪れており、その前後の時期にさいたま市域を訪れたのではないかと考えられています。

円空仏のある市町村の地図
出典:大宮市立博物館(1985)『市制45周年・開館5周年記念展「円空-激情に秘めた祈り-」図録』p.9 大宮市立博物館.

さいたま市立博物館の円空仏

当館では、常設展示に3体の円空仏(複製)を展示しているほか、各所有者から寄託を受けた円空仏を保管しており、時期を限って特別公開を行っています。

  • 常設展示中の円空仏(複製)

宮ケ谷塔観音堂円空作神像

宝積寺円空作役行者像

観音堂円空作神像 2体(観音堂(見沼区宮ケ谷塔)蔵)※左写真

縦に割った木材の節や枝の形を活かしながら彫られた神像です。「観音堂円空作龍頭観音像他三躰」として市指定有形文化財(彫刻)に指定されています。

宝積寺円空作役行者像 1体(宝積寺(見沼区深作)蔵)※右写真

四つ割りにした丸太を使って彫られた修行僧の像です。「役行者(えんのぎょうじゃ)」は、奈良時代の人物で、山中で修業を行い、修験道の祖となったといわれています。円空作の役行者像は数が少なく、埼玉県内にまとまって残されています。市指定有形文化財(彫刻)に指定されています。

  • 寄託されている円空仏

地蔵院円空作不動明王像

松本家円空作天神像

観音堂円空作観音像 1体 (市指定文化財)(見沼区東大宮) 
観音堂円空作菩薩像 1体 (市指定文化財)(見沼区東大宮)
地蔵院円空作不動明王像 1体 (市指定文化財)(見沼区東大宮)※右写真
松本家円空作天神像 1体 (市指定文化財)(見沼区島町)※左写真
観音堂円空作龍頭観音像 1体 (市指定文化財)(見沼区宮ケ谷塔)
観音堂円空作菩薩像 1体 (市指定文化財)(見沼区宮ケ谷塔)
観音堂円空作神像 2体(市指定文化財)(見沼区宮ケ谷塔)
丸ケ崎円空作菩薩形座像 1体(市指定文化財)(見沼区丸ケ崎)

 

指定文化財となっている市内の円空仏の紹介

文化財保護課が制作している、市内の指定文化財の紹介ページへのリンクです。

県指定有形文化財(彫刻)

市指定有形文化財(彫刻)

 

江戸時代その2 -井沢弥惣兵衛為永のはなし-

関連リンク

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電話番号:048-644-2322 ファックス:048-644-2313

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